製薬業界
2020年08月24日
薬学部を目指す人用の話です。
今日、こんな記事が出ていました。
製薬の国内最大手、武田薬品工業が自信の大衆薬部門を他社に売却するという記事です。
武田といえばアリナミンやベンザブロックなどを市販していますが、これらを全て他社に売ってしまうということです。
武田といえば、少し前にこんな話↓も出ていました。
これらをつなげて考えて見ると・・・
「武田薬品工業、大ばくちでついに金がなくなったか・・・」
と思ってしまいそうですが、早計です。
結論を言ってしまうと、「アリナミンなどの大衆薬部門は、武田薬品にとっては大したものではない」ということです。
実は、よくCMなどで目にする風邪薬や栄養ドリンクなどの薬の部門は「大衆薬部門」や「一般用医薬品」などと呼ばれており、製薬業界では小さな市場です。それに対し、病院などに出すような薬の部門は「処方薬部門」や「医療用医薬品」などと呼ばれ、こちらの方が売上も圧倒的に大きく利益率が高いのです。例えば「消臭元」など独特のネーミングで知られる小林製薬も、国内製薬売上で行けば20位くらいに過ぎません(売上1600億)。知名度とランキングが一致しない業界なんですね。
武田薬品工業全体の売上は、現在約3兆円。そのうち、今回売却になる「大衆薬部門」は600億円しかない。6000億じゃないですよ、600億です。2%くらいしかない。コストの割にそんなに儲からないから売っちゃえ、ということですね。
話を本題に。
薬学部に行くひとは、薬剤師のコース(薬学科:6年制)か、薬品研究開発のコース(薬科学科:4年制)に行くことになります。後者の場合、薬剤師資格を取らず、大学院などに行ってそのまま大学に残って研究者になったり、または大学院卒業後武田薬品のような製薬業界に研究職として就職するパターンがあります。(もちろん全然違う仕事の人もいます)
製薬業界とはどういった業界か?単純に売上での比較ランキングを見てみましょう。
【2020年版】国内製薬会社ランキング 武田、3兆円超えでトップ独走…海外拡大で上位は軒並み増収
ご覧の通り、武田薬品工業がダントツのトップ独走状態です(国内)。これはもう数十年、こんな感じです。ちなみに、2位の大塚はポカリの会社ですね。3位のアステラス(山之内製薬+藤沢薬品工業)、4位の第一三共を見るまでもなく、吸収合併を繰り返している、もうずーっと戦国時代な業界です。
なんでこんな戦乱状態なのかというと、世界のランキングをみると分かります。
【2020年版】製薬会社世界ランキング ロシュがトップ維持…2位ファイザー、3位はノバルティス
あれほど圧倒的な首位独走の武田でさえ、世界で見るとかろうじての9位。トップのロシュにはダブルスコアで負けています。
・・・というくらい、製薬業界は世界での覇権争いがはげしく、その波が日本にも襲いかかっているわけです。
ただし、製薬という業界は国民の命がかかっており「ハイ、負けました。外国人さん、どうぞ日本で商売してください」というわけには行かないので、なんとか規制やらなんやらで国内企業を持ちこたえさせて、「さあ!今のうちに合併して大きくなるんだ!外国人が入ってくるぞ!!」というような状況にあるわけです。
ちなみに、「別にいいじゃない?外国の会社が入ってきても」と思われる方。
もしここを明け渡してしまうと、今回のコロナ禍のような状況で薬を売ることを条件に色々な外交的不利を押しつけられてしまいますよね。それは困ります。
そんなわけで、まとめます。
製薬に行くひとは、
1.国内は合併の嵐。武田1強体制が続いているぞ。
2.とはいうものの、武田、伸るか反るかの大ばくち中だぞ。
2.世界で見ればまだまだ日本は弱いぞ。
となります。学生のうちからどんどん海外に出て行く・・・のがいいでしょうね。そんな業界です。