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自然科学と人文科学

大学での勉強は自然科学、人文科学という区分けで話されることがあります。簡単に言えば、自然科学=理系、人文科学=文系です。今回は、「人文科学系で勉強するのも結構いいですよ」という話です。

 

 

 

最近はSTEAM教育(※)なんていう言葉がありまして、「理系こそ至高」のような風潮が強まっています。

 

 

(※)…科学(Science)、技術(Technology)、工学(Engineering)、アート(Art)、数学(Mathematics)の頭文字。

 

 

 

このなかの「アート」は、いわゆる絵や彫刻というより「リベラルアーツ」=人文科学を指す意味合いが元々強かったはずですから、そもそも「理系教育頑張れ」ということとはちょっと違うのです。しかし、衰退しつつある日本の工業を憂う気持ちと混ざり合って、なにやら「絵も描ける理系育てようぜ」みたいなニュアンスに勘違いされている感じです。純粋にいわゆる「技術」だけを指すならテック(Tech)の方が近いと思います。

 

 

 

理系と文系による収入差については以前書いていますのでご参照いただくとして、今回は単純に人文科学系の面白さについて書いてみようと思います。文理選択で困った人など多少参考にしていただけるといいかなと思います。

 

 

 

人文科学系、ここでは文系としますが、おおまかに

法学部

経済学部

文学部・人文学部

教育学部

外国語学部

社会学部

国際関係学部・国際教養学部

人間科学部

あたりの名称になっていることが多いです。(大学によって呼び名が多少違うかもしれません。)

 

それぞれの学部についてできるだけ簡単に書いておきます。詳しくは塾に各学部をくわしく説明した本があるので是非見てみてください。

 

法学部

法哲学(法そのものの成り立ちとか哲学的探求、人権など)

国際関係法(国際間での法律とはどうすべきかとか、どうなっているかとか)

刑事

民事

法学部だからといってみんなが司法試験を受けるわけではなく、どっちかって言うとたいてい就職です。

名古屋大学を例にとると、司法試験については1学年150人くらいのところで受験者80名程(既卒生なども含め)合格は40名程度です。

 

経済学部

経済と経営に大きく分かれ、前者は理論経済がメイン、後者は会計やマーケティングなどがメインになっていきます。会計士になりたいなら後者の方がいいかもしれません。

また、それぞれ内容は国内・国際、マクロ・ミクロという見方もありますし、金融というテーマの立て方もあります。とにかくお金に関わること、すなわち物・金・人の動き全てを扱うので思ったより分野も広く面白いそうです。ただかなり高確率で難しい数学を使うので、数学が苦手だった人は危険かもしれません。

 

文学部・人文学部

非常に幅広い分野を扱い、哲学、美術史、歴史学、考古学、心理学、国文学、外国文学などなどです。社会学部がない大学は社会学もここで扱っています。

ほとんど趣味のような内容ばかりなので(そんなこと言うと怒られるかも汗)、大学で学んだことが仕事に直結する人は多くはありませんが、学芸員とか教員とかそんな感じです。

心理については臨床心理士・公認心理師といった資格が取れるかどうかは事前に確認しましょう。大学によります。

 

教育学部

教員養成系とそれ以外に別れます。前者は文字通り教員養成で、近隣ですと岐阜大学教育学部や愛知教育大学がこれにあたります。

それ以外の教育学部は、教育学と教育心理学に分かれることが多いです。教育学は、教育という分野を学問として扱います。学校教育法がどうとか社会人の教育機関はどうとか。教育心理学は青年心理とか犯罪心理とか、いわゆる「心理学」と聞いて思い浮かべるのがここです。近年では独立して「心理学部」を作る大学も増えてきました。心理系資格を取りたい場合は、取れる大学なのかどうか調べておきましょう。

 

外国語学部

国立大では東京外国語大学が頂点にして唯一の大学です(公立だと神戸市外語とか有名)。かつて大阪外国語大学という大学もありましたが阪大に吸収され、今は阪大の外国語学部になっています。世界各国の言語を学問の対象として学びます。したがって、例えば東外大に行ったからしゃべれるようになるかといったら全然そんなことはなく、あくまで学問をします。

とはいえ、留学する率もダントツで高く、学年の半数~3分の2が何らかの形で海外留学しているようです。休学になるのか単位認定されるのかは調べておきましょう。

偏差値では英語、フランス語、ドイツ語あたりが高く、次いでイタリア語、ポルトガル語、スペイン語などのラテン系、以下その他言語といった序列になっていることが多いです。

 

社会学部

社会学という学問自体が比較的新しく(20世紀後半くらいから)、実はほとんどの大学で扱っていますが、文学部あたりに社会学科として所属していることが多いです。「社会学部」として学部を持っているのは一橋大学が有名です。他は名市大の「人文社会学部」など。

「社会学」といっても中学・高校の社会とは全く違い、「人間の生きる社会」という意味での社会を扱います。世間とか時代とか流行とか、地域と言ってもいいかもしれません。流行りの「地政学」みたいなのもおおまかに社会学といって良いと思います。

流行の音楽やゲーム、アイドル、世の中にある物ありとあらゆる物が研究対象で、「結局それって何しているところなん?」という疑問がついて回りつつその答えは分からないままみたいな所はあるのですが、その混沌が面白い。時代や流行の変遷や差異に自分独自の串を刺して解明していく感じでしょうか。といってもちゃんと学ぶと結構難しい所からスタートしたりするので面食らうかもしれません(レヴィ=ストロースとか)。

 

国際関係学部・国際教養学部

外国語学部が外国語を研究対象として扱うのに対して、外国そのものまたは国際間のパワーバランスなどを扱っていきます。「英語は好きでコミュニケーションを取ったり国際的な仕事をしたいが、別に文法オタクになりたいわけじゃない」みたいな人はこっちの方が向いていると思います。ズバリ「国際○○学部」みたいなのは私大に多く、特にキリスト教系でよく見られます。上智、南山で「国際教養学部」がありますね。「グローバルな人材育成」みたいなふわっとした感じの話はたいていここの辺りです。

 

人間科学部

最近下火になりつつありますが、学部が細分化されすぎて「隣の学部は何をする人ぞ」になってしまった反省を踏まえて「色んな学部を横断的に再構成しようじゃないか」と言う気運で90年代くらいにたくさんできました。京大の総合人間学部が有名です。京大だと文系学部は「文・教・法・経」なので、それ以外の人文科学は全て「総合人間学部でやってる」みたいな感じです。でも結局他の学部とやっていることが微妙に重なってくるので、「法律!」とか「文学!」とか決めている人はそっちへ、そこまでではないがなんとなく幅広く人間を扱いたいという方向けの学部です。実際何をやっているのか・・・はF先生へ聞いてみましょう。馬にくわしくなるとかならないとか。

 

心理学部

近年私大で爆増している学部です。公認心理師という国家資格ができたことが大きいです。

臨床心理士と公認心理師は別物で、前者が「日本臨床心理士資格認定協会」の認定資格、後者は国家資格です。

日本では、心理系の「ちゃんとした資格」は臨床心理士で、認定されている大学院を出なければ取れないなどハードルが高く、また現場で働いている方もこちらを持っている方が多いです。実務系ですね。

公認心理師は国家資格ですが、こちらは比較的近年(2018年)にできたばかりの資格で、まだそれほど多くの人が持っているわけではありません。臨床心理士と比べてどちらかと言えば理論系でしょうか。

実務的には両方持っているといいのですが、どちらも「この大学院を出なければ受けられない※」という規定がありますので資格を取りたい方は事前にきちんと調べておきましょう。

(※大学院を出る以外の受験パターンもあります。実務経験何年とか)

 

 

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