重工業という礎
2020年09月27日
あまり華々しくマスコミやドラマなどで取り上げられることはないのですが、重工業というのは日本の国をガッチリ支える屋台骨の一つです。
理系であれ文系であれ、就職先として重工業は安定した人気があります。
それは、景気に左右されたり時代の波に翻弄されながらも、重工業が紛れもなく工業国日本を支えてきた証であり、今後の日本の姿を映し出す鏡だからだと思います。
工業と一口に言っても、おおまかに軽工業と重工業があります。軽工業は紙やプラ製品など、比較的生活雑貨に近い物をイメージするとわかり易いと思います。それに対し重工業は金属や航空宇宙、化学や機械製造一般を含み、文字通り重い物を作る会社のイメージが近いと思います。物自体もそうですが、設備や工業も非常に大がかりで、関連企業や下請け孫請けなどを含めれば超巨大なスケールで企業グループを形成しています。(通常、重工業に自動車は含みません。そういえばかつて富士重工という会社がありましたが普通にスバルに社名変更してましたね)
工業が日本の復興を支えたのは事実ですが、近年は中国をはじめ新興国に負け・・・など、「今後重工業は大丈夫か?」というニュースがここ数十年言われています。確かに工業という広いくくりで見ればどんどん新興国が生産能力を上げています。しかし、あくまでこれは私見ですが、今後も日本の産業において重工業が廃れることはないと思います。それどころか、日本の産業を牽引する第一人者であることは変わりないと思います。
理由はいくつもありますが、やはり大きく二つ、企業グループとして巨大すぎて潰せるわけがないこと(働く人も多いですし)、もう一つは比較的古いジャンル(鉄鋼など)では新興国に負けても※、先端分野や技術の面でまだかなり優位であることです。ある意味、保守的な安心感と先進の希望を兼ね備えた、まだまだビッグな夢のある産業だと言えるでしょう。
※確かに、製鉄や機械製造などの分野では新興国の方が優位になってきました。既にかなり成熟した技術がありますから、技術移転と資金援助さえあれば、新興国でもそうした分野での成長は比較的短い期間で可能です。基礎生産について言えば日本を超えた国はいくつもありますしこれからも越える国は出てくるでしょう。事実、中国やインドなどの国々がそうしたジャンルの成長とともに成長しています。反対に日本は鉄で国を支えることは既に出来なくなっています。(山崎豊子の『華麗なる一族』の時代設定は100年前です)
では、日本の重工業はもうオワコン(終わったコンテンツ)なのかというと、そうではありません。とっくの昔に他さまざまなジャンルに進出し、新たな技術はもちろん新たな産業そのものを創出し続けています。ロケットやリニア、ロボット(半導体はコスト競争でボロ負けでしたが)など多彩なジャンルで米と競うトップランナーです。
いずれこうしたジャンルでも日本は負けるのではないか?という心配はごもっともです。しかし、実際にはかなりまだまだ日本優位です。なぜなら、こうした産業は初期投資が莫大に必要であったり、そもそもの教育レベルや社会基盤の成熟が必要とされるからです。そのためには長い年月がどうしても必要になります。韓国や中国で大きな自動車メーカーがなかなか成長しないのもそのためです。中国産、韓国産のオリジナルブランドの車や電車が日本を走り出したらいよいよ・・・かもしれませんが、その時はさらに日本が数十年先へ行っているでしょう。そう簡単に逆転できないのです(させないようにするのが日米の戦略ですし)。
そんなわけで、日本の重工業は世界にもまれに見る「強い」産業なのです。
業界としてまだまだ先が楽しみであるのはいいとして、業界内はどうなっているのでしょうか。
「重工業」というくくり全体では、日本国内では三菱重工業が強いです。企業グループとしての大きさ、売上は圧倒的です。さすが「三菱は国家なり」を超えて「重工こそ三菱なり」です。安定感は抜群です。2位が川崎重工業(我らが川重!)、3位が石川島播磨重工業(IHI)です。しかし一方でこの業界はグループ全体で比べても余り意味がないかもしれません。
このレベルになると、国の基幹産業、いわば背骨なので、どれも潰すわけにはいきません。はっきり言えばこうした企業がある日突然潰れることはないでしょう。ですから、IHIや川重より三菱重工の方が安定感があるね!というのは、それほど意味のない比較な気がします。
ある程度の安定が保証されているのであれば、あとは何をするかですよね。重工業は幅が広く巨大なだけに、いろいろなジャンルを扱っています。会社ごとに得意分野がありますし、カラーも異なります。会社内でも衰退しているジャンルがあれば、発展しているジャンルもある。そんなわけで、三菱重工はもちろん、川重やIHI、その他重工系にはそれぞれの魅力があるのです。
素人部外者が内実を知ることは難しいですが、ちょっとだけ感じる方法があります。
例えば三菱重工のHPのトップ画像です。
いや~なんつーか、素っ気ないです笑
「役員人事の件」とか、「三菱重工ってどんな会社なんだろ~?」って検索して最初のクリックで見られる言い回しじゃありません。ここら辺が三菱らしさ、かもしれませんね。トップ企業感ハンパないです。
一方で、我々岐阜人には身近な川重のHPです。業界2位。
一隻数百億円のタンカーから、1台数百万円のバイクまで一堂に会してワクワクしません?重工業は身近で直接見かけることがあまりないですが、その点川重は異色ですね。実際はバイクやモーター分野は、川重全体の売上の6分の1ほどしかありませんが、バイクと言えばkawasakiみたいな、さすがイカす。
広告宣伝が圧倒的に上図なのは、業界3位のIHIです。
さらに、ポップに会社を紹介するサイトまであります。
いまいち何をやっているか分かりづらい重工業の世界を身近に感じてもらうことに力を費やしているのはIHIを置いて他にないでしょう。もっとも、ここら辺が業界3位の泣き所。どうしても就活などで三菱重工や川重には負けますから、こうしたメディアの力でのし上がってきた側面は否めません。
おとうさんおかあさん世代には、緒形直人のCMがなつかしいですね。(94年頃)
というわけで、ちょこっとだけ見てみましたが割と身近に川重さんいらっしゃいますし、知り合いに三菱重工もIHIもいたのでなんとなく話は聞いていて、やっぱり企業カラーってHPだけでも結構にじみ出てくるな~なんて思います。