国語には国語の世界がある
2023年10月15日
今回は高校生向けの話です。
国語を「読解力があれば読んだら分かる」と思っていませんか?
全然違います。数学の才能があったら、初めて見るベクトルの問題を解けますか?無理ですよね。国語もちゃんと分野があって、それぞれの「世界観」が存在します。
評論ですが、Z会の「現代文キーワード読解」を元にすると、
科学
言語
文化・宗教
哲学・心理
近代
現代社会
自己/他者
身体論
メディア・芸術論
政治論
経済論
歴史論
と分かれています。
河合塾の「ことばはちからダ!現代文キーワード」を元にすると、
近代
科学と人間
文化と文明
身体
情報
社会
宗教
心理
論理
哲学
修辞
と分かれています。
それぞれに多少の違いはあるものの、ほとんど同じようなジャンルわけをしているのが分かると思います。
これが、数学で言うところの
2次関数
確率
三角関数
ベクトル
・・・
といった単元に該当するわけです。
というわけで、現代文もそれぞれのジャンルにおいて何が議論になっているかを知っていれば、「あ、宗教ね。ということはこういう話だろうね」ってのが分かります。大学入試ってのはそれほど複雑怪奇/細かい議論は扱っていません。そのジャンルの王道、「宗教と言えばこれ」みたいな、ド直球の話を持ってきます。(ですので、慣れてくると共通テストの問題くらいなら質問に持ってこられても1~2分ざざっと見れば内容は分かります)
という具合に、国語が苦手な人はもちろん、得意な人もジャンルそれぞれの基本的な内容はおさえてください。上記の例に出した本を読むだけでおおまかな議論は分かります。それを知った上で、次に解法の技術の話になります。そういうもんです。
小説ですが、やはりジャンルがあります。内容にとらわれがちなんですが、まず押さえて欲しいのは時代です。その作品がいつ頃の時代に書かれたものなのか、どういう世界観の元に書かれた物なのか。それだけでその時代における人々の考え方、生活の息吹がぐっとわかり易くなります。特に現代の高校生の感覚ではさっぱり理解出来ないことが平気で出てくるのが小説問題です。「女中ってメイドって感じですか~?」「う~ん、そういうことなんだけど、多分思ってるんと違うよ」って感じですかね。女中がいたころって華族とかいた時代だったりするので身分の上下関係がくっきり分かれてるんですね。一生住み込みで主人に仕える女中みたいな感覚って現代人にはまず理解出来ないもんです。
/////////////////////////////////
次に解法の技術ですが、評論も小説も一貫して言えることは「筆者の気持ちもお前の気持ちも聞かれてねぇ」ってことです。読書感想文でも小論文でもありませんから。よく小説の筆者が自分の文章を題材にした問題をやっても100点取れないなんて話が出ますが、そりゃそうです。聞かれているのは「出題者の意図」ですから。
このあたりの話は過去に何度か書いてきていますので割愛して、もう少し話を進めます。
出題者の意図と書きましたが、もっと正確には「出題者がどうやって誤答(誤った選択肢)を作るか」と言う視点を持ってください。これだけで勉強がめちゃくちゃはかどります。
出題者はおそらく間違いなく正答から作ります。そして次に誤答を作ります。国語も入試問題である以上、答えが一つに絞れなければなりません。みなさんならどうしますか?やりやすいのは、「正解を一部書き換えて誤答にする」です。
正解の選択肢を
「太郎は父への長年にわたる反感から抗いたい衝動を持ちながらも、一方で父の愛情に初めて気付いて困惑した。」
だとしましょう。もちろんこれは本文に根拠が必ずあります。(これも有名なポイントですね)
では、誤答を作ってみましょう。
【一部改変型】
「太郎は父への長年にわたる反感から抗いたい衝動を持ちながらも、一方で母の愛情に初めて気付いて困惑した。」
共テで言えば(2)の一番簡単なパターンですね。どこが違うか分かりましたか?
【内容逆転型】
「太郎は父の愛情を感じたが、長年にわたる反感から抗いたい衝動を抑えられず困惑した。」
順番を前後入れ替えただけですが、ニュアンス(というか結論)が全然違ってきます。ここでは「困惑した理由」が違いますね。
【必要な部分を省略型】
「太郎は父の愛情に初めて気付いて困惑し、これまで経験したことのない動揺から何も言えなかった。」
テストでは迷うヤツです。間違ってないんです。が、足りないんです。今回だと「長年にわたる反感」のあたりが抜けています。これは「傍線部を全てカバーしているか」ってヤツですね。これも現代文読解ではよく書かれていることです。解答として不十分なやつはスゴく迷います。
【全然違う型】
省略。
おおよそ現代文の問題の選択肢はこのようにして作られています。共テ現代文が苦手な人、おさらいしておきます。
正解には必ず根拠があるから見つける練習をする
↓
選択肢を一つ一つ根拠部と照らし合わせ、間違い探しをする(上記の間違いパターンも知っておこう!)
これだけ意識するだけでも全然勉強が違ってきます。苦手な人、早速実践してみてください。あとは訓練あるのみです。模試や問題集の解説を読み、自分の「間違い探し」が的確かどうか確認しましょう。解説にはキチンと書いてあります。(Z会、代ゼミ、東進あたりの本は普通に書いてあります。河合塾はプラスαいろいろ述べてるので文系は河合の解説はじっくり読みましょう。理系の人は避けてもいいと思います)