理系と文系、どちらがいいのか(収入)
2022年01月08日
とりあえず手っ取り早く収入格差の話をしておきます。
独立行政法人経済産業研究所(総務省の外郭団体、簡単に言えば国の機関みたいなもんです)による調査結果を比較的わかり易く要約してくれています。調査は2009~2010年にかけておこなわれたものです。
・理系平均681万円、文系平均583万円
・理系A≧理系B≧文系A≧文系B・・・(ABCは大学の偏差値を表す)
・理系は平均所得が高いが、幅が狭い。
・文系は平均所得は理系に比べ低いが、幅が広い
・文系内でも入試で数学を使った受験者(636万円)とそうでない者(506万円)では130万円くらいの所得格差がある。※
※入試で数学を使うのは一般に国立文系、使わないのは私立文系と考えて良い。
この記事の先生もおっしゃっているとおり、これだけを見て理系がいいねとなるのは早計です。
この手の話にはいくつか注意点があります。この調査の元データは↓です。
ここから拾ってみます。
男性
理系出身者の平均年収/600万円
文系出身者の平均年収/559万円
女性
文系出身者平均年収/203万円
理系出身者平均年収/260万円
このあたり、日本のジェンダー平等が叫ばれる理由の一つですね。
またこの調査において、理系のうち医療関係が占める割合が11%と、比較的高所得な人が多数含まれています。さらに従業員規模500人以上の大企業、および官公庁で働く人の割合を合わせると38.4%となります。
つまりは、そもそも回答者が高所得な人に偏っています。それはどうなんだと。
と、調査結果についての疑問はさておき、話を進めます。
調査が2008年頃におこなわれたということは、ちょうどリーマンショックで世界経済が混乱していた時期です。不況ですね。翌年の2009年3月、日経平均はバブル後最安値の7054円を記録しました。ちなみに2022年1月5日現在の日29,332円であることを考えると、当時は超絶不景気ということが分かります。
一般に、理系や官公庁は不況に強い、つまり景気による変動は比較的受けにくいとされています。もちろん製造業などは不況の煽りは当然受けるのですが、生産や雇用の調整によって会社自体は(特に大企業は)生き残る率が高いです。まぁ何年にもわたって工場を作って生産して・・・となるので、ちょっとやそっとの景気変動では大きく揺るがない体制を取っていることが多いわけです。逆に言えば、景気が良くなったからと言ってすぐにバカスカ年収が上がるわけでもありません。会社が資本を蓄積して新工場を設立したり・・・となりますので、儲かったからと言って給料で払ってスッカラカンにするわけにはいかないのです。
一方で文系企業は、大企業であっても景気の煽りを受けることが多いと言われています。文系就職の代表である金融やマスコミなどは、景気が良ければ一気に儲かりますが(実際バブルの頃は文系企業の方が遥かに年収が高かった)そうでないと大変な事になります。あれだけ栄華を誇ったフジテレビも希望退職を募るくらいですし、某青色メガバンクもATMがしょっちゅう止まるくらいですから(これは関係ないか)。
他にも言い出したらきりがないですが、まとめると安定高収入を求めるなら理系。人生で一発花を咲かせたいなら国立文系といったところでしょうか。
おまけ。
ちなみにどっちも仕事は大変です。ちょっとあんた大丈夫?ってくらい働いています。特に高学歴な人ほど、その高学歴で優秀な頭と何より何時間でも机に向かえる力を生かしてめちゃくちゃ働きます。大企業が給料がいいのは主にそのためです。
おまけその2
上記で、一般論として「文系企業は不況だと儲からない」という話を書きましたが、銀行に関しては実はちょっと違う話があります。
確かに銀行は金を貸して利ざやを稼ぐ商売なので、景気が良くなってお金を貸して欲しい会社が増えればその分利息も増える、儲かると言うのが教科書的な話です。ですが金融業界に限っていえば、景気連動・・・ともいえない側面があります。
この論考のP49に過去19年分のメガバンクの業務純益等々が出ています。
グラフ中の黒い棒グラフが業務純益、つまり最終的にいくら儲かったかを表します。
また、グラフ中の濃いめグレーが総資産を、グラフ中の折れ線グラフは、業務純益を総資産で割った数値の変遷を表します。
2003年からのデータなのですが、ちょっとまて、2003年ってまだまだ小泉内閣ー竹中平蔵経産大臣の時代です。構造改革、金融不況の時代です。ちょうどりそな銀行が破綻寸前に追い込まれ公的資金(国からの資金援助)注入で生き延びたのが2003年です。続いて他行も公的資金を受け入れ命からがら金融機関だけが生き残って猛烈に批判を浴びていた時代です。
にも関わらず、「~ジレンマ」に出てくる黒い棒グラフのように、各行とも公的資金注入後も空前の(この数字は空前の、なんです)業務純益を上げ続けてきました。つまり、
潰れそうになった
↓
税金借りて生き延びた
↓
めちゃめちゃ儲けつづけた
↓
借金返済(りそな銀行『公的資金の完済について』)
と言う20年弱を過ごしてきているのが銀行だったりします。
また、グラフの後半になるにつれて総資産(濃いめグレーのグラフ)が一気に増えていますよね。銀行にとっての資産とは、多くは貸出金を意味します。つまりここ10年ほど、一気に融資残高が増えていることを意味します。
にもかかわらず、折れ線グラフがどんどん下がっていると言うのは、「貸し出しが増えているのに儲けが減っている」ことを意味します。簡単に言えば金貸しでは儲からないということですね。だから手数料収入を少しでも上げようと必死になっているのが現状です。手数料収入とは振込手数料であったり投資信託や保険の販売手数料などです。
と言うわけで、やはり大企業は不況に強いな~となります。
おまけその3
その2で「不況なのになぜ銀行は儲かるの?」という点について。
不況の間は超低金利になります。教科書通りです。というか、教科書レベルを通り越してゼロ金利政策(この話はまたいずれ)を軸に超低金利政策を取ってきました。銀行に預金をしてもほとんど利息なんてもらえませんよね。ここがミソで、この「ゼロ金利政策」によって1番得をしたのは銀行です。銀行(特にメガバンク)は、自分が金を調達する際に預金・・・もありますが、実は結構な金額を別の市場から調達します。その市場での借入金利がほぼ0に誘導されていたわけです。言ってみればタダで金を借りてきて利息を取って金を貸すと言う商売を銀行は続けてきました。そこで上がった利益を元に国への借金を返済したわけです。利息を0にして銀行に金を貸してくれた人がいるわけですね。「税金だろ!!」と思いがちですが実際は日銀です。日銀がお金をじゃんじゃん刷って(比喩表現です)銀行向けにタダで貸しだしたわけです。特にリーマンショック以降は超絶に通貨供給量が増えています。
おまけその4
話はそれますが、銀行は預金をすると喜ぶ・・・と思いがちですが、銀行の経営レベルになると実は違います。
銀行は、お客さまから預かった預金にたいして「預金保険料」というものを払わなければいけません。銀行が倒産したときに預金保険機構が補填すると言うアレです。お客さんに預けてもらったお金に対して銀行が払わなければいけないコストが預金保険料、と言うわけです。
この預金保険料率、実は結構高くて
2021年度で0.031%も払わなければなりません。
それに対し、銀行間で貸し借りをしているインターバンク市場(高校の公民で出てきますね)での金利はマイナス金利です。(マイナス金利って、借りるとお金もらえるの?と思いがちですが、実際は手数料を払って実質ゼロ金利)
銀行からすれば、お客さまにお金を預けてもらうより、他の銀行から借りた方が早い・安いと言うことです。
とはいえ、銀行預金は比較的長い期間を決めて預けてくれる安定的なお金であることに対し、銀行間の貸し借りは日々のやりとりが多いので一概に比較できる物ではないのですが、それでも預金は、銀行からすれば大きなコストがかかるものであって、メガバンクは「もう預金はいらない」なんて思ってたりします。(小さな地銀、信金は銀行間の巨大市場に参加できないのでちょっと話が違いますが)
おまけ5
久々に見たらLibor廃止されてたのか・・・影響でかそう・・・
つーか誰が読むんだこんな話笑