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数学はセンスか

結論を言ってしまうと「センスじゃない」です。

 

 

中学生と話していて「数学のセンスないから暗記科目がんばる」って言ってまして、いやいやそれは違うぞ、と。

 

 

どの科目も積み重ねが大切とはいいますが、数学は本当に積み重ねです。特に小学生の頃の積み重ねは大きく、ここを逃すと取り返すのがとても大変です。(とりかえせないわけではない)

 

 

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ちょっとそれますが。

 

 

算数嫌いを増やすおおきな要因とにらんでいるのが「計算ドリル」なんですが、計算ドリルは人によっては本当に苦痛です。もちろん正しい計算方法を身につけるには訓練するしかないのですが、訓練ばかりやらされて、しかも訓練で100点満点を求められ続けてそれが6年も続けば嫌にもなりますね。延々素振りをやらされて、「素振りを100点にしろ!ミスをするな!」という競争を強いられるようなものです。(関係ないけど延々素振りと手延べ素麺は似ている)

 

 

 

算数にせよ数学にせよ、「考え方が分からないのか、計算を間違えただけなのか」の切り分けはきちんとしたいですね。計算が違っているだけなら実は大した問題ではありません。しかし、何年もやっていると往々にして「もはや計算が違うのか、式の立て方が違っているのか」すら分からない状態になりがちです。経験的には5年生あたりがこの山かなと思います。6年生になるともう一山越えた後って感じです。「式は合ってるけど計算が間違ってる~惜しい~ちょっと計算ちゃんと練習しとこうか!」って感じが理想なんですけどね。

 

 

 

計算が完璧になるには非常に高いハードルを越えなくてはなりません。計算が完璧というのは、すなわち「ミスをしない人間になる」ということです。そう考えると、やっぱり一番最初に目指す事ではないですよね。逆に、計算が完璧に出来ている子は、なにがしか「完璧にしたい」と思う強い動機があります。「せっかく式はあってるのに計算で落としてもったいない」と思うとか、「何がなんでも100点とりたい」とか、「絶対に1番になりたい」とか。

 

 

 

つまり「計算ミスをするな!」より、「これが出来たから計算なんかで落としたくないよね」とか、「計算さえあってれば100点だったね!」というような、もう一歩手前の目標を設定してクリアすることが大切です。そうすると「計算なんかで落としたくない!」と思うようになります。それまでは、「まぁ計算ミスっただけならいいか」ってのも、多少アリです。いつも平気になってはマズいのでここら辺のさじ加減は難しいですが。ゴールは「計算ミスりたくない!って自分で思える」ことであるのは忘れないようにしたいところです。

 

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さて、数学はセンスか?の話ですが、センスではないと断言しました。(大学レベルはセンスがあると、纐纈さんが言ってたので大学の数学科はたぶん違う)

 

 

 

どういうことかというと。例えば、

 

 

「シャープペンシルは、芯を入れて使いづけられる」ということを知ったとしましょう。そうすると、賢い子は「ボールペンだって芯を入れ替えて使い続けられるのでは?」と考える事が出来るわけです。「そうよね、賢い子はそう言うことを思いつくのよね。これってセンスよね。」

 

 

 

・・・と思いますよね。そこが誤解です。「シャープペンで出来るからボールペンでも出来るかも?」という思考そのものは、天才的な発想ではなく「Aで出来たらBも出来るかも」というよく知られた思考法で、それ自体は珍しくありません。

 

 

 

じゃあ、なぜ人によって差が出るのか。ポイントはここだけでも3つあります。

 

 

1.AとBをそもそも知っていること

2.Aで出来たらBでも出来るかも、という思考方法自体を知っていること

3.AとBを結びつける思考方法を普段から実行していること

 

 

これらが全て組み合わさっているわけで、1つ1つは天才でもなんでもないですが、積み重なると大きな差になります。おそらく、これが「一見センスに見える」数学の差だと思います。

 

 

そしてもう一つ付け加えると、これも重要なのですが

 

 

4.大人は出来るが、子どもは1~3のどれか、または複数が未熟

 

 

という事実です。ついつい大人感覚で「なんでこんな簡単なことが分からないのだろう、きっとセンスがないのだ」と決めつけがちですが、大人だから自然と出来ていることでも、子どもは「知らない」から出来ない、どこかで引っかかるのです。算数や数学が得意な子はこれらを「思いつき」や「センス」で生み出しているわけではありません。1つ1つ知識や思考を積み重ねて、やり方を、考え方を知っているのですね。

 

 

 

というわけで、数学はセンスではなく知識・思考の実践の積み重ねという話でした。

 

 

 

 

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