英語を使って仕事とか
2023年06月04日
生徒のみなさんとお話ししていると、結構な頻度で出てくるのが「将来は英語を使う仕事をしたい」「プログラミングの勉強をしたい」という話です。
例えば東京外国語大学という大学があります。国立唯一の外国語専門大学です。(大阪外語大学は阪大に吸収されました)
英語が好きな子からわりと希望進路として上がってくる大学なんですが、東京外大は「英語(とその文化)」を研究する大学なので、4年通うと英語に詳しくはなるんですがそれだけではしゃべれるようにならないんですね。
※ただし、大半がしっかり留学に行くのでしゃべれるようになる。でもあくまで留学するから。
※英語以外の語学ももちろんありますがスペイン語なり中国語なり、みんな同じです。
※異論反論もあるでしょうが、大雑把な話です。
英語や英語圏の文化、またさらに多言語を研究したいならこれはいいんですが、でも英語をペラペラしゃべって颯爽とニューヨークを歩くみたいなことを想像しているとそれはないんですね。しゃべるだけなら他の大学でも全然構わない。結局留学すればいいわけですから。なんなら留学したときのために中高の間にしっかり文法をやっておきましょうね、単語をたくさん覚えておきましょうね、の方が大事です。
結局英語を使って何をするかが大事なんですよね。今は英語しゃべれる人はたくさんいますので、ただ会話するだけでは金にはならないわけです。例えば翻訳や通訳みたいなお仕事は、単にしゃべれるのではなく機械設計に詳しい翻訳家とか、医療に詳しい通訳とか、専門の内容をどれだけ押さえているかで身を立てているわけです。そんな世界に「ただ単に英語を日常で使える」って人が来ても、「ただしゃべれるだけの移民」にしかなれません。まぁ今は移民になるのは大変ですけど。
さて、プログラミングも同じ事が起こっています。プログラミングをやりたい子って、PCに向かってカタカタとプログラムを組んで走らせてデバッグして・・・ってイメージの子がほとんどなんですが、「こういうアプリ作って」って言われてプログラムを組むみたいなことは、もはや大学を出てやる仕事ではありません。専門卒で十分です。それどころか、もっと悲惨なことになっています。下手したらプログラム自体をAIが組める時代になってしまいました。「ネットやAIが進歩したら英語の勉強が不要になる」と言われてもうン十年経ちますが、まだまだ遠いですね。やっぱりしゃべった方が速い。ところがプログラムの世界は、もはやプログラムがプログラムを作り出すこと自体は難しくない時代に入っています。
お気づきの通り、大切なのは「こういうアプリを作って」という指示を(AIが適切に組めるような知識を持った上で)出す事なんですね。少なくとも現代では、そしてまだしばらくは、AIは「すでにある知識」を大量に学習した上で何か判断を下す装置であって、0から何かをクリエイトする力は持っていません。AIが玉手箱だ、何か人間が思いもつかないようなものを生み出すのだと思っているならそれは幻想です。
では大学の「情報工学」みたいなところでは何をやっているかっていうと、先の例のような東京外国語大学的な感じでプログラミング言語そのものを研究しているとか、または蓋を開ければ何かの分野に非常に特化したプログラミング言語をやっているとか、そんな感じですね。天才的なレベルでプログラムを組んでしまう人はたしかにいるんですが、やはりそれは天才の話であって、大学の研究というのは実はそういう突飛な天才を求めていない(と思う)んです。そう言うひとはさっさとベンチャー行ったり起業なりしたほうがいい。大学はあくまで知の積み重ねであり研究の場なので、ただただプログラミングをするだけの労働者がほしいわけでもないし、チームで地道に積み重ねることが出来ない天才を(まして全ての仕様書なり論文が英語で書かれているにもかかわらずろくに英語も出来ないような人は)求めていないわけです。
となると、「大学でプログラミングを学びたい」という人は、「本当に言語そのものに興味があるのか、またはプログラムを使って何かをしたいのか」をしっかり考える必要があります。例えば医療ロボットを使って介護の現場をもっといいものにしたいとか、教育の場にプログラミングの力で進歩を促したいとか、そういうことです。
実は同様の話は法律や経済、工学でも農学の分野でも同じ事が言えて、「それを使って何をしたいのか」がまさに問われているわけです。大学進学の際には、そこまで考えておきましょう。もちろん途中で変わっても構いません。大学に入ってから方向性が変わったり定まったりすることもありますし、それも全然OKです。でも中高時代にそこまで考えて志望してきた人と、漠然と「プログラミングが好きなんで・・・」くらいで入ってきた人とでは、大学での学びが全然違ってきます。そういうもんです。
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全然関係ないですが聞かれましたので、この内容でだいたい20分~30分くらいです。