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全国学力テストの衝撃

全国学力テスト結果公表 初めての英語に課題

 

 

↑この記事には書かれていませんが、昨日のNHK・NW9では、「彼女はローマに住んでいます」を、正しく「She lives in Rome.」と書けたのが、中3で33%だったと報じていました。

 

 

ポイントは当然中1の2学期あたりで学習する「三単現のs」です。これがきちんと書けるのが、なんと中3でたった3割しかいないと言う報道です。

 

 

各社いろいろな論調がありますが、NHKの論調に賛成します。

 

 

すなわち、「コミュニケーションを重視するあまり、基礎的な英語力が抜け落ちてしまっている、一度立ち止まって基礎からきちんとやるよう英語教育を見なおすべき」というものです。

 

 

 

今回の学力調査は、小学校で英語が必修化された初めての学年だそうです。

 

 

 

そこだけとらえると、小学校の英語教育が失敗しているのでは・・・と思いがちですが、我々のような仕事をしているとちょっと感想が異なります。

 

 

 

ひょっとして関係している方なんかもいらっしゃるかもしれません、あくまでも一般論でお話しします。これを読んだ方が、ご自身のお子さまの子育ての参考にしてくださることだけを目的としています。特に何か具体的に批判したいわけではありませんのであしからず。

 

 

 

小学校での英語教育は、今のところ何か具体的な成果を上げてきているとは思いません。塾で見ている限り、英語好きが増えたとも思いませんし、英語嫌いが増えたとも思いません。そもそも、ほぼ話題に上がってきません。他の科目や学校の様子はできるだけ子どもたちに聞くようにはしていますが、本当に、驚くほど英語についての話題は出てきません。

 

 

 

そこを敢えて聞いてみても、「別に・・・」「まぁ」「普通」みたいな解答が返ってくるだけです。おそらく、ですが、学校の先生の準備が行き届いているために、授業がシナリオ化しているのだと思います。台本をなぞって1時間をつつがなく過ごすことに執心しているので、それ以上にもそれ以下にもなりようがない、こんなところでしょうか。子ども同士で差がついたり競争があるから、達成感や不満、不安が出てくるものです。他の科目にはそれがあるけど英語にはないんだと思います。

 

 

 

一方で、英語についての学習熱が年々高くなって言っているのは感じます。学校じゃない場にそれを求めるんですね。ここが問題です。

 

 

 

まず結論を申し上げますと、小さい頃から英語教室などに通っていた、この経験が問題です。そういう子が、中3で英語90点以上になるのは体感でも1割以下です。というか、中1の段階でかなりの確率で80点程度、その後80点をキープできれば良い方ですね。小6や中1から始めた子たちと同等か、抜かれている子も多いです。

 

 

 

なぜこんなことになってしまうのでしょうか。

 

 

 

まず子どもたち本人の意識が大きい。すなわち、「自分は小さい頃から英語をやってきて(しかも多分誉められてやってきて)自信がある。勉強しなくてもある程度いける」と言う意識です。開智塾的発想で行けば、毎回95点を超えていれば得意と言えるかもしれませんが、それ以下なら努力が必要です。英語に限らず、勉強ってそんなもんです。小さい頃から英語教室に通っていたことを、勉強しなくてよい免罪符にしてしまっている。それではできるようになるわけがない。しかも、英語は数学と違ってどかーんと点数が下がりにくい科目です。だから、徐々に出来なくなっていることに気づきづらい。中1、中2で英語が80点とか70点って、普通にピンチですよ。その意識が弱い。

 

(ちなみに、英語教室では小さいときから出来ても出来なくても誉められるそうです。怒ったら生徒がやめちゃうからですね。今の時代。だから誉められまくって、自分は出来ると勘違いしちゃう。これは英語だけじゃなくてスポーツでもあるんじゃないですか?このあたりはまた別で。)

 

 

 

次に、親の意識。「小さい頃から英語教室に通わしていたから、うちの子は英語が好き。だから大丈夫」と、なぜか勝手に思っている。「数学に比べてマシ」ってのは、得意でも何でもないですよ。数学嫌いに比べたら英語は好きって、なんじゃそれって話です。また、親側の意識として、昔の自分の体験に対する反発が大きすぎます。昭和の頃の英語教育は、確かに暗記暗記で詰め込み、読み書き中心でした。だから子どもにはそんな風に思って欲しくないと言う気持ちは痛いほど分かります。が、はっきり言いますが、受験は今も変わっていません。今だって、大学入試の英語は暗記中心読み書き中心です。リスニング?平成初期のセンター試験ですでにありました。200点中20点だったのが、いまは200点の筆記と50点のリスニング。切り離されただけで、リスニングの比率がどれほど上がったと言えるでしょう。たいして変わってないんです。

 

 

 

次に、英語教室の話です。あくまでどこだと特定はしません、一般論で、経験的な話です。

 

 

英会話教室をやっている人の、英語のスキルが低すぎるんです。ろくに文法も分かってない人が平気で教えている。

 

 

 

○○大学英文科卒とか、○○短大英文科卒とか、まぁそれはともかく、アメリカ留学経験が半年だか1年だかで、平気で英語をおしえている。それがきちんと勉強した英語ならいいですよ。実際はかなりひどいもんです。

 

 

これまでに聞いた話だと、

 

・日本の教科書の英語は今は使われないものばかり

・こんな(教科書)英語覚えても伝わらないよ

・sとか、あってもなくても、きちんと通じるから大丈夫

・単語50個覚えたら日常生活には十分、それ以上は覚えなくていい

・書けなくていい、それよりlとrの発音の違いの方が重要

 

まだまだ枚挙に暇がないですが、全て子ども伝いに聞いたリアルな話ばかりです。そしてそのセンセイが作ったスピーチコンテストの原稿たるや・・・高校入試レベルの英文法がろくに出来てない。スピーチにはふさわしくないスラングモリモリ・・・と、ここまでひどい人は少ないですが、まぁ結構います。

 

 

当たり前ですが、↑の箇条書きの内容は全て間違っています。

 

 

日本の英語の教科書の文章は、どの英語圏に行っても通じます。スラングを使えればかっこいいかもしれませんが、日本と違ってはっきりとした階級区別がある国々で、果たしてスラングを使う場面ってどこなんでしょう。子どもたちをどこのスラム街に行かせたいんでしょう。何十年も前のNYの地下鉄が怖いレベルの知識の人達が、まともな学校に進学したらまず使わないようなスラングを教えている。恐ろしい話です。

 

 

親は、小さい子を英語教室に通わせる目的をはっきりさせてください。外国人とコミュニケーションを取れる。臆せず話しかけられる。これで十分です。それ以上を求めるのなら、教える側にかなりのスキルが必要です。ただ楽しいだけの英語教室は、何年通っても中学高校で英語の点数が取れるようにはなりません。教える側にせめて英検準一級以上、TOEICなら800点以上のスコアを持っているか尋ねてください(これくらいだとセンター試験の英語で95%くらい取れるでしょう)。このラインは、かなりきちんと勉強していないと取れない(が、探すのが困難なほど大変なレベルでもない)、身近な「ある程度きちんと英語が出来る人」と考えていいでしょう。

 

 

 

 

子ども向けの英語教室を否定しているわけではありません。そこでの目的はあくまでも「楽しく英語に触れる」「外国人に物怖じせずに話せる」であって、それ以上のものを求めると時間とお金ばかり使って効果はマイナスになる可能性が高くなりますよ。気をつけましょう。

 

 

 

ちなみに、日本人が英語を話すのが苦手・・・、高校レベルの文法が分かっていない人は恐らくまともにしゃべれるようにならないんじゃないですかね。いや、スーパーの店員と話すくらいのことなら別にいいですが、あくまで受験科目としての英語の話です。逆に、文法をきちんとやってきた人は、話せるようになるのはそれほど大変ではありません。慣れればいいだけですから。大学入ってから1年くらい留学したらはなせるようになるでしょう。

 

 

 

開智塾は、英語だろうが数学だろうが、受験科目と割り切っています。別にしゃべれるようになって欲しいとも思いませんし、英文学者が考えるような基礎からきちんとした厳密な英語を身につけて欲しいとも思っていません。大学入試で希望の大学には入れる程度の英語力を身につけてくれればそれでいい。そのためには基礎や暗記が重要だから、それを徹底してやる。それだけです。

 

 

 

大事な事は、楽しく、飽きさせない授業を展開することではない。楽しいに越したことはないが、それよりももっと大事な事。楽しくなくとも、やらなきゃいけない事はきちんとやれる。必要な事はやりきれる。将来に向かってきちんと我慢と努力が出来る。時間をうまく使って楽しみも見つけていける。そんな人になることだと思っています。