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高校生の現代文の勉強

今回は長文ですが、すごくためになることを書いています。(自分で言っちゃうぞ)

 

 

 

現代文が苦手だと感じている人、「なんとなく」得意だと思っている人は是非しっかり読んでみてください。

 

 

 

 

現代文は「どうせやっても上がらない」とか、逆に「読めば分かる」とか、出来る人と出来ない人で言ってることが全く違って面白いものです。

 

 

ところが、「読めば分かる」派の人も高2の後半くらいから急速に点が取れなくなったりします。問題のレベルが一気に抽象度を上げ、さらに「知ってなきゃ分かるわけない」世界観が出てきたりするんですね。

 

 

数学で言えば、ベクトルなんてのは事前に勉強してなきゃその世界のことは分かりません。足し算引き算すら出来ないでしょう。ですから、きちんと事前に勉強してその世界での計算の仕方を練習しておくわけです。

 

 

現代文も実はかなり似たところがあり、「これは知ってなきゃ出来ないよな・・・」という問題が結構あります。(特に河合塾の全統は難しいですね。。。)

 

 

 

例えば、名古屋大学の2次試験国語の問題文の一節を参照してみます。

 

 

引用では「権力」について書かれています。せっかくですから「権力」という言葉の意味を想像してから読んでみてください。

 

 

 

引用/////////////////////////////////

そして、権力をめぐる語り方も各々別物になっていく。人間は均質だと考える人々は、均質なレンガのような人々を合理的に積み重ねて大きな建築物を建設するといった形の権力を思い浮かべやすい。そして社会とは大きいほど偉大で優れていると考え、膨大な人員からなる組織や、巨大な国家---「大国」---こそが優れていると考える。これに対して、人間は多様だと考える人々は、その場その場、その瞬間その瞬間に生じる関係こそが社会であり、各々の関係を個別に調停するのが権力だと考える事が多い。巨大な組織や、国家というのを否定するわけではないが、ここの現場で日々作り出されている関係の方がより具体的で身近だと考える。

引用終わり/////////////////////////////////

犬飼裕一『歴史にこだわる社会学』八千代出版/2020年名古屋大学2次試験国語

 

 

 

多分読む前に想像していた「権力」とは違うなということはおわかりになると思います。

 

 

広辞苑には『他人をおさえつけ支配する力。支配者が被支配者に加える強制力。「―の座につく」「―を振るう」「―者」→政治権力。』と出てきます。これがいわゆる普通に想像する「権力」というものです。

 

 

しかし、この問題文中での「権力」とは、王様が臣民を統治するような権力を指していません。簡単に言えば「人々の関係を規定する社会構造そのもの」を指します。日本で言えば「憲法・法律・常識・社会の目・世間の目」みたいなもの全てが「権力」に相当すると言ってよいと思います。そしてこれは、哲学や社会学の世界ではある意味「常識」の範疇です。(逆に、最初に想像した「臣民を従わせる力」を持った者は、現代においては権力者というより「独裁者」と言った方がいいと思います)

 

 

 

ちなみに、本文中に「権力とはこういうものだ」という話は出てきていません。じゃあ分かるわけないだろ!って声が聞こえてきそうです。そう、分かるわけがないのです。ベクトルの計算のように。「知らなきゃ分からないで終了」なんですね。入試本番でこんなのが出たら大変ですよね。(とはいえ、相当に読解力がある人は、問題文全てを通して読んだら「あれ?権力って言葉の意味が違うな・・・こういうことかな?」とある程度の理解は出来ますけどね。)

 

 

 

さて、入試という観点からすると、よほど読解力に自信があって「どんな問題が出てもそこから全ての意図をくみ取って解ける」という人以外は、上記のように「権力とは何か」と言うことを知っていた方が有利に決まっています。今回は名古屋大学の入試ですが、こうした例は枚挙に暇(いとま)がありません。

 

 

 

現代文は詰まるところ、ベクトル演算のように「知ってると解ける、知らなきゃ全然分かんない」と言うことが山ほど出てくる科目なんです。上位大学になればなるほどこうした傾向にあります。すなわち、「読解力があれば分かる」とか、「読解力がないからやっても出来ない」というのはかなりの部分、単なる幻想なのです。得意でないと思い込んで避けてしまっている人も、きちんとその世界観を理解して問題に当たればかなりの部分得点アップが可能です。特に2次試験は70点取れれば合格ですから、きちんと対策すれば十分に可能です。

 

 

 

 

じゃあどんな世界観があるのか?数学の「ベクトル」「数列」のように現代文にも決まった単元はあるのか?というと、実はあるのです。割とハイレベルな2次試験用の現代文問題集をいくつか手に取って見てください。「哲学・宗教」「美術」「政治」・・・などと、問題内容に応じてジャンルわけがされているものがいくつかあります。これが、現代文における「単元」に当たります。そう多くはありません。せいぜい8~10程度です。これらを「単なるジャンルわけ」と思わず、「単元」と思って取り組んでみてください。きっとわかり易い単元とそうでない単元があると思います。その苦手単元を1つ1つ克服していくと、単元ごとに「ここが議論の中心だよな」というところがありますので、出題者が何を意図しているのか鮮明に分かるようになります。で、結構理解できるようになります。

 

 

 

 

とはいえ、そこは入試ですから、もちろん解答作成(選択肢の選抜)技術が必要になります(ここ、もちろん大事なんですがまたいずれ)。でも基本的な知識がきちんと備わっていれば、「なんでこれが答えなのか分からん」「結局何言ってるかよく分からなかった」「2番と3番って同じ事を聞いてるように見える」という「現代文あるある」には陥らないですみます。

 

 

 

現代文が苦手だな、という方はまず「ジャンルわけがされている問題集」を当たり、「現代文キーワード」(塾の階段のところに置いてあります)のような本で言葉の意味を確認して世界観を知ってください。実は最小限の努力で一気に点数を上げられるのが現代文ですよ。

 

 

 

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