5分で分かるウクライナ情勢(5)
2022年06月09日
しばらく戦況は一進一退でしたが、話が世界の食糧問題に拡大してきています。
濃い赤丸がウクライナとロシアの戦闘の中心地、紫のぼんやりが今回ロシアが事実上武力支配、赤ぼんやりが親ロシア派の支配地域です。
主に中東やアフリカ方面に向けて穀物を輸出しているのがロシアとウクライナなのですが、特にウクライナからの輸出がストップしてます。
図の通り黒海のあたりをズラッとロシアが抑え、艦隊を配列しているので恐ろしくてタンカーが通れないって状況です。
かといって、陸路で西(地図で言うと左)へ輸送するのも困難です。というのも、ウクライナ国内で鉄道施設自体が爆撃を受けていること、そして軌道敷(線路の幅)がロシアと西欧諸国と違うのでそのまま貨物列車の乗り入れできず、移し替えたりしなきゃ運べないんですね。
輸送量を考えてみてもタンカーで大量に一気に南へ届けるのが良いのですが、今はそれができていません。このまま行くとアフリカなどで大量に餓死者が出てしまいます。数百万人とも数千万人とも言われています。
で、この黒海周辺を安全に航行できるようにするためロシアとウクライナは輸出のための海上輸送について協議する必要があるのですが、仲介役を黒海対岸のトルコが行っています。もちろんトルコにとっても黒海周辺の安全は大切な問題です。
そこで、今般ロシアとトルコで話し合いが行われましたが、ロシア「俺らはいいけどウクライナがばらまいた機雷をウクライナが除去しろよ」と主張しているのに対し、トルコ「取り合えずみんなで話し合いをしようぜ」といっている状態ですね。
ウクライナは「おまえら勝手に話すんな、ウクライナ含め関係国全てで話し合ってそもそもロシアの軍事侵攻なんとかしないと話にならん」といっています。
ゆっくりとですが、戦禍の影響が拡大していってます。
ところで、食糧もそうですがロシア産天然ガスの供給が怪しい(というか止まりつつある)ので、燃料代がガンガン上がって、発電やらガソリンやらの値段がどんどん上がっているのが世界の現状なわけですが、日本も例外ではありません。どんどん物価が上がっています。身の回りにある物で石油や天然ガスと無縁な物はありません。他国から輸入したガソリン使って車を走らせなければ、原油を使って発電しなければ、鉛筆1本すら手に入れられないのが日本です。家計を逼迫しますね。
日本はこれに加えて20年ぶりくらいの円安に見舞われています。
というのも、海外ではコロナ不況→好況へと政策転換をしつつあります。景気が良くなってきているので金融引き締め、つまり金利が上昇している状況に入っている感じですね。一方日本はまだ「大規模な金融緩和」を続けており、つまりは金利が非常に安い状態なので、円を売ってドルを買い、金利の高いドルで運用しようとする人が多いわけです。日本の輸入企業にとっては超痛手です。
一方で円安は輸出企業には追い風です。外国で物を売ってドルを手にして、それを日本円に換えて持って帰るわけですから円安の方がお得なんですね。
というわけなので、物価が上がって生活は苦しいけど巨大企業には追い風の部分も多い昨今の状況でした。