一覧に戻る

5分で分かるウクライナ情勢(20)

 

その1

その2

その3

その4

その5

その6

その7

その8

その9

その10

その11

その12

その13

その14

その15

その16

その17

その18

その19

 

ロシアの侵攻からまる2年以上。初めてウクライナがロシア領土へ侵攻しました。

 

ウクライナ、ロシアの主要な橋を破壊 – BBCニュース(爆破映像あり)

 

 

クライナによる侵攻は国境を越えた地上攻撃だ。5000~1万2000人の兵がかかわっているとされる。未検証のロシア報道では、ウクライナ軍は最大30キロもロシア領内を進軍している。

ウクライナ政府は、今週半ばまでに自軍が70カ所以上の村や町を含むロシア領1000平方キロを制圧し、数百人の捕虜を捕らえたと発表した(編注:ウクライナ軍のオレクサンドル・シルスキー総司令官は15日には同軍が国境から35キロの地点まで到達したと報告し、82集落を含む1150平方キロの面積を掌握したと説明した)。

ロシア当局によると、約13万2000人が自宅から避難したという。

【解説】ウクライナの越境攻撃に米製兵器は使われたのか、ジレンマが浮き彫りに – BBCニュースより引用

 

 

防戦一方でロシアを押し戻す作戦ばかりでしたが、ついに新たな局面へと移りました。

 

 

これまでは国際世論を身方につける意味でも「防戦に徹する、支援を!」という方針だったのですが、それを破ってロシア領土に侵攻したことは2つの大きな意味があると思います。

 

 

一つは、ロシア国民の感情を刺激して、ロシア国民に「自分事」として思わせて反戦感情を抱かせること。

もう一つは、戦争終結への準備です。

 

 

これまでロシア国民は、「偉大なる大統領が『ウクライナに占領されていた』土地を取り返そうとしてくれている」と思っており、自分には被害が及ばないかぎり他人事でした。しかし「いざ自国に侵攻されたら」という現実を突きつけたことの意味合いは大きいと思います。実際、家族を徴兵に取られた人々による反戦活動も地道に続いているようです。

 

 

さらに、国際世論は「そろそろ戦争の支援も難しいぞ」という空気になってきています。言うまでもなく米国大統領選でウクライナへの弾薬供給に批判的なトランプ氏が共和党候補となり、ことによっては大統領になる可能性が高まってきたからです。

 

 

最大の支援国であるアメリカがそっぽを向くようになると戦況の悪化は避けられません。これ以上ロシアが大規模な攻撃をする前に少しでも早く戦争終結に向かっていくしかないわけですが、ウクライナのゼレンスキー大統領は「全ての領土を元に戻せ」と一貫して主張しています。

 

 

となると、有効な方法は交換です。

 

 

ウクライナがロシア領土を侵略して領土や人質を奪って、最終的にロシアが攻め込んできている領土と交換で元通りに終結させたい。これがゼレンスキー大統領の狙いかと思われます。

 

 

とはいえ、この作戦は大きな賭けでもあります。

 

 

これまでの国際支援はあくまでも「一方的に侵略されているウクライナを横暴なロシアから守る」ためであり、だからこそ「反暴力」という建前で結束できたわけです。「横暴なやつにいじめられているかわいそうなウクライナを助ける」ということです。ところがいざウクライナが攻めた、ましてそれが他国の支援した武器によってとなると、もはや中立とは言いづらくなってきます。少なくともロシアから見れば「敵に味方している」となるわけです。戦争がエスカレートする危険があります。