5分で分かるウクライナ情勢(11)
2022年11月16日
ほぼ戦況は「ロシアの負け確定」で、一部撤退を命じるなどの動きが出ており、「いつまでにどんな形で終わらせるか」が最大のポイントでした。
ウクライナ(ゼレンスキー大統領)側は「過去に勝手に占領されたクリミア半島まで全て取り返す」と言っていますし、国際社会に対し継続支援を求めています。
一方のロシアは「近時のエネルギー価格高騰や食糧不足、物価高は、西側諸国がロシアを虐めるからだ」との主張を繰り返しつつ、恐らくクリミア半島は死守、その上でウクライナ東部の何州かだけでも手中にして「戦果」を残したいと考えています。
と言う状況でとんでもないニュースが入ってきました。
ロシア製ミサイル ポーランドに落下 2人死亡 ポーランド外務省 | NHK | ウクライナ情勢
もしこれが本当にロシアのミサイルならば、NATO加盟国であるポーランドに対して被害を出してしまったわけで、ポーランドとしてはNATOとしての対応が必要になるかもしれない、そうなれば戦禍がさらに拡大することは避けられない情勢となります。
上記記事の最大のポイントは
「北大西洋条約第4条の適用の可能性について、同盟国と協議している」と述べ、NATOの加盟国の領土や安全などが脅かされている場合に対応を協議すると定めた北大西洋条約第4条の適用を要請するかどうか、検討していることを明らかにしました。
の部分です。NATO加盟国は、「NATO加盟国のどこかが攻撃されたらそれはNATO全体への攻撃とみなして対応する」としています(集団的自衛権)。その検討をするかどうかを協議するといっているわけです。
もしNATOがこの条文を適用して「NATOに対する攻撃だ」と捉えれば、NATO軍が出動することになります。ウクライナとしては、ぜひそうして欲しいところです。
動くか、動かないか。
動けば面倒なことになるが、恐らく戦争はすぐ終わる。そして今後も「何かあったらいつでもやったるからな」という強いメッセージになる。
動かないとなると、もし本当にロシアの攻撃が(仮に単なるミスだったとしても)NATO諸国に及んでも、結構弱腰で場合によっては許されてしまうという既成事実を残してしまうことになる。
究極の選択です。
ロシア自身は「これはロシアを陥れるためのウクライナによる罠だ。ロシアはポーランド方面にミサイルを撃っていない」と、これを否定。あくまで「これはウクライナによるものだ」との立場を取っています。
その後、こんなニュースが。
ポーランド着弾ミサイル、迎撃でウクライナが発射した可能性ー米当局=AP | ロイター (reuters.com)
ウクライナの迎撃ミサイルが、謝ってポーランドに着弾したとなれば、NATOとしても動く大義がなくなります。「NATOとしては大変迷惑だし許しがたいが、今のウクライナの情勢からしたら仕方ないよね」と言うことです。
もうひとつ、このニュースのポイントは「アメリカのバイデン政権」が主張し始めているという点です。
アメリカでは中間選挙があり、バイデン大統領(民主党)とトランプ前大統領(共和党)との戦いが繰り広げられています。NATO盟主としてのアメリカが早い段階でこのメッセージを出すのは、世界にリーダーシップを示して強い大統領として印象づける、場合によっては「俺のおかげで戦禍が拡大せずにすんだ」と言いたいバイデン大統領の思惑も見え隠れするのではないでしょうか。
この件の対応如何で戦局が大きく変わる・・・可能性もありましたが、どうやらウクライナの誤射ということでなし崩し的に終わっていきそうな感じです。(つまり、宇露戦争はまだまだ終わらない)