5分で分かるウクライナ情勢(23)
2025年02月28日
アメリカのトランプ大統領が戦争の終結に動き出しています。
トランプの思惑は大枠こうです。
・就任早々に、バイデン前大統領ができなかったウクライナロシア戦争の終結を達成して自身の成果をアピールしたい。
・散々武器供与をしたのだから見返りが欲しい。(ウクライナに大量に存在すると言われているレアアース資源の採掘権←特にこれ)
・ロシアはもはや敵ではないレベルの国なので、終結のためには多少メリットを与えても良い。
で、上記が達成出来れば
・対中国で優位に立てる。レアアースは現在中国の独占状態にあるので、中国以外の供給先を手に入れたい。
というわけです。石油を巡って戦争していた頃となにも進歩してない・・・
ウクライナは領土の完全奪還とNATO加盟(することで今後の安全が保障される)を求めています。
NATOはアメリカを中心とした軍事同盟で、かつてはソ連を中心としたワルシャワ条約機構と対峙していましたが、ソ連崩壊後は建前上の敵を失っています。とはいえ、事実上「対ロシア」なんですが、ロシアと仲がいいのが中国です。
で、ウクライナのNATOに加盟を認めると、アメリカ・ロシア双方にとって面倒になります。
アメリカ:ウクライナがNATOに加盟したら、「加盟国が攻められたらNATO総出で迎え撃つ」という約束があるので、万一またロシアに攻められたらマジでロシアとやり合うことになり非常に面倒だ。てゆーかロシアまたやるやろ。そしたらアメリカ出なきゃじゃん。
ロシア:また今後も理由をつけてはウクライナを攻めたい。しかしウクライナがNATOに加盟したらおいそれと手を出せなくなる。是が非でも阻止したい。NATO(=アメリカ)とガチバトルは避けたい。
ということで、ウクライナのNATO加盟には米ロ共に反対なんですね。
よって、ウクライナにはNATOに加盟させず、万一またロシアに攻められたらその時考える・・・って感じで放置した方がいいってのがアメリカの立場です。
/////////////////////////////////
国連総会で二つの議案の採決がありました。
ウクライナ侵攻 ロシア軍撤退求める国連決議 アメリカは反対 | NHK | 国連
国連総会の議決について、以下まとめ。(NHKニュースより)
まず最初に
>ウクライナやEU=ヨーロッパ連合などが提出した戦闘の停止とロシア軍の撤退などを求める決議が賛成多数で採択されましたが、アメリカは反対(日本は賛成※)
これに対して、アメリカが別の議案を提出。
>さらにアメリカはこの決議案に対抗して「侵攻」などロシアへの批判的な文言を使わずに「紛争の早期終結」を要請するとした別の決議案を提出しました。
しかし、
>このアメリカの決議案に対しフランスなどは「ロシアによるウクライナへの全面的な侵攻」という表現を盛り込んだ修正案を提案し、これが各国の賛成多数で採択されたため、アメリカは自ら提案した決議案を棄権しました。
アメリカはとにかくロシアに恩を売って、自国の権益を最大化させようとしています。(見方を変えれば、「もっとも金を出してるんだから当たり前だろ!それで戦争が終わるならいいじゃないか!」という現実主義とも言えます)
※日本がアメリカと違う立場で「賛成」に回ったのは結構大きなことです。
「アメリカに尻尾を振らなかった!平和主義日本!」・・・ということではなく、もしここで「ウクライナ、領土取られてもしゃーないよ、ロシアに譲歩しないと戦争終わらないよ?」っていうアメリカの案を認めてしまうと、同じことが日本でも起こる可能性があるということを危惧しているのです。トランプならやりかねない。
つまり、今回のウクライナとロシアの戦争は、同じことが日本とロシア、日本と中国(・・・は極端にしても、中国・台湾の間)でも十分に起こりうると考えているのです。
/////////////////////////////////
3/4追記
トランプとゼレンスキーの喧嘩について、評価を下すのは早計だと思います。
個人的にはゼレンスキーのパフォーマンスで、アメリカがどこまで譲歩するかギリギリを攻めたんじゃないかなと思っています。
だって今回の会談は、
・ウクライナのレアメタル権益をアメリカが手にする
・NATO加盟は認めない
というアメリカ一人勝ちのシナリオって分かってたわけです。ゼレンスキーは是が非でもNATO加盟がほしかった。何が何でも安全保障体制を確立したかったわけです。それがないのが分かっている会談に臨んで調印しても意味がない。
とはいえ、アメリカに手を引かれては困る。どこまでやったらアメリカは手を引くか?っていう勝負に出たんじゃないかなと思っています。ていうか俺ならそうするってくらいですけど。
で、3/4になって
トランプ大統領 ウクライナへの軍事支援 一時停止を指示 “戦闘終結へ役立っているか確認するための措置” | NHK | トランプ大統領
のニュースが流れました。顔に泥を塗られたアメリカからしたら当然の措置です。ゼレンスキーも悪い方のシナリオとしてこれくらいは読んでいると思います。
第二ステージは、これに対して欧州が支援を継続するか?です。今のところ、欧州が支援を継続するでしょう(今のところのその可能性が高い。最大の支援国だったドイツも、支援縮小を訴えていたAfDが選挙で躍進はしたものの第一党にはならなかった)。
となると、トランプは親ロシアとして国際的に孤立しかねないので、アメリカも完全なる支援打ち切りはしづらい。「支援の一次停止」でゼレンスキーを揺さぶっているのだと思います。
あとはゼレンスキーがどこまで「攻めた」外交をするか、ですね。アメリカと喧嘩したからにはこれをうまく収めなければならない。
アメリカはNATO加盟は絶対に認めないだろうから、ここからどう駆け引きをして行くのか。
今回の件で国際世論をかなり身方につけられたのは大きいと思います。アメリカは露骨すぎた。

