5分で分かるウクライナ情勢(24)
2025年05月18日
一つ大きな山場にさしかかっています。やはりアメリカの介入が大きいです。
そもそもなぜアメリカのトランプ大統領が介入しているかですが、大統領選挙の際に「ウクライナ問題なんてあっちゅうまに解決してみせる」と大見得切ってしまったからです。というのも、当初予想を覆し長期化したウクライナ問題、前バイデン政権の武器・弾薬支援(アメリカが最大の支援国)に対する批判が高まっていたんですね。
バイデン氏の民主党はリベラルで、簡単に言えば「人権尊重・平和主義・多様性尊重」などを掲げていたため、「早い段階で収めるために」武器・弾薬支援を行いました。が、長期化。選挙までダラダラと引っ張ってしまったといった具合です。
当然それに対するトランプ氏は「俺なら解決出来る」と。
で、ロシアには「さっさと解決しねーと経済制裁きつくすっぞ」、ウクライナには「さっさと取られたところ諦めてバンザイしろ、悪いようにはしねーから!ただしレアメタルよこせよな、あとEU加盟はダメな!」という圧力をかけています。
そこで、トルコのエルドアン大統領の下、停戦交渉が行われました。
トルコが仲介外交で存在感 ロシア・ウクライナ協議の舞台に | 毎日新聞
(ちなみにエルドアン大統領も10年以上に及ぶ長期政権です。)
今回の停戦交渉は、事態が(自身の介入にもかかわらず)好転しないことに頭にきたトランプ米大統領が圧力をかけまくって、ようやくプーチンが「プw そんな言うならちょっと話してやるかw」って感じで始まっています。「ま、本気で話す気はねーけどなwこれ以上トランプほっとくわけにもいかねーからw」みたいな感じです。トランプ氏は独裁政権でもなければ任期もある米大統領ですから、なんでも思い通りにできて人気取りの必要もない(国内のプロパガンダもうまく行ってる)プーチンに足元を見られまくっています。停戦交渉にプーチン本人は出てきませんでした。
対して、ウクライナのゼレンスキー大統領は徹底して「国土の無条件回復・即時停戦」を訴えかけ「俺本人が直接行くからプーチン出てこいや!!」っていってます。これ、当然裏には「・・・というわけで俺はトランプさんの顔に泥塗らずにでてきてまっせ!悪いのはプーチンですから!!」って意味が込められています。
結局停戦交渉はうまく行かず。プーチンが来ないならと、ゼレンスキー大統領も直接参加はせず。報道によればロシアの要求がウクライナ側には全く受け入れられない内容だったようです。
ロシアの要求は概ね以下の2点に集約されます。
・占領している土地はロシア帰属に
・ウクライナのNATO加盟却下、軍事的中立化
特に2番目は、ロシアが絶対に譲れない一線です。ただでさえ、これまではロシアを怖れて中立だったスウェーデンが3月にNATOに加盟承認され、ロシアのすぐ隣の国までNATOに加盟してきています。この上ウクライナまでNATO加盟国になったら、ロシア包囲網が強固になってきます。
NATOは加盟国が攻撃されたらNATO全体への攻撃と見なして全員で全力攻撃しますって条約です。ウクライナがNATOに加盟したら、ロシアとしてもおいそれと手を出せません。
・・・ということは、ロシアはまだまだウクライナを攻める気だということです。
当然ウクライナとしては受け入れられません。
話し合いは当然決裂します。←今ここ
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ところで、トランプ大統領は大見得を切る割に、今のところうまく行っていません。
ウクライナ問題や関税政策とスベっているトランプ大統領ですが(スベっていると言っていいと思う)、これらには共通点があります。
いずれも「中国・ロシア」という、2大共産主義・独裁政権であることです。
まず対中国、これがアメリカ的には最大の懸案事項で、なんとかして貿易不均衡をひっくり返したい。もっと言えば「最近調子に乗って大きくなった中国を永遠の2番手にしたい」わけですが、取った方策が「関税爆上げ」という最悪手でした。とんでもない関税をかけたら習近平といえど折れてくるだろうと。
ところが思ったよりも習近平氏は塩対応でした。もちろんある程度の関税掛け合い戦争になるという予想はあったのですが、全然降りる気配もなく。
こればっかりは習近平氏の方が遥かに上手でした。
中国との貿易が冷え込めば、困るのはアメリカも同じ。中国との貿易は輸出・輸入共に莫大で、これは対中貿易がストップしたらたくさんのアメリカ国民が困ることを意味します。そして選挙で選ばれた大統領であり、共和党の看板背負ってるトランプ氏の立場上、いつまでもそんな状況のままでいるわけにもいかない。そうなると、焦るのはトランプ氏です。まさに自縄自縛なので、ほっとけばいい。困って焦るトランプ氏を見てから重い腰を上げればいい。
中国の経済もよくないのですが、だからといってすぐ退任を迫られるようなことはないのが中国共産党のトップです。あまたの政敵をぶっ潰して独裁政治をやっているわけですから、目先国内に敵はいない。対してトランプ氏はそうもいきません。結果、トランプ氏の方から折れることになり関税115%引き下げ合意となりました。ぶち上げた看板を下ろしたわけです。
これにより、世界のみならずアメリカ自身も株価爆上げ。皮肉なもんです。
そして対ロシア。プーチンも独裁者です。国内世論を気にする必要はない。いくらでも時間を引き延ばしてアメリカの出方を見ていけばいい。時間を焦るトランプ氏、ゼレンスキー氏に対して最大の武器は「時間」です。粘ったもの勝ち状態になっています。